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名物なし、おもしろい人あり この街から生き方の選択肢を やさしく届けたい

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「あなたの住むまちを紹介してください」

そう尋ねられたら、どう答えますか?

特産品や地理、人口規模などがまず思い浮かぶかもしれません。歴史や行政の特徴的な施策など、一歩踏み込んだ情報も話したくなりそうです。

それに加えて、自分だったら伝えたいのが人のこと。

どういう人たちに囲まれて、どんなふうに関わりながら暮らしているのか。人の姿が見えてくると、よそ者の立場でも、まちをぐっと身近に感じる気がする。

生き方や働き方、まちなかで起こっている営みや交わされる何気ない言葉など。人からまちをプロモーションしていく仕事を紹介します。

誰もが、どこにいても自分らしく生きていけるように。

そんなビジョンのもと2016年に立ち上がったのが、シビレ株式会社です。和歌山市や仙台市、熊本市に拠点を置き、自治体と二人三脚で移住・定住支援やシティプロモーションに取り組んできました。

今回は、新たな拠点となる福岡県大牟田市(おおむたし)のローカルディレクターを募集します。

地域に関わる人たちを取材し、動画や記事コンテンツを通じてありのままの魅力を伝えるのが主な仕事です。

任期は3年。その後に独立するか、シビレの社員となるかは本人次第。独立するにしても、シビレのみなさんが全面的にサポートしてくれるとのこと。

経験は問いません。人に会い、その魅力を伝えていきたいという想いが原動力になります。

 

福岡県の最南端に位置する大牟田市。福岡空港と熊本空港、いずれからも車で1時間と少し。佐賀空港からは45分の距離にある。

取材の待ち合わせ場所は、「大牟田市ともだちや絵本美術館」。動物園に併設されている美術館で、大牟田市出身の童話作家・内田麟太郎さんの「おれたち、ともだち!」シリーズをはじめ、約1000点の原画が収蔵されている。

壁際の棚には、さまざまな作家さんの絵本が表紙の色順に並んでいて楽しい。

「ここ、いいですね〜! オフィスにしたくなっちゃう(笑)」

心の声を代弁してくれたのが、シビレ代表の鈴木さん。この日は出張先の北海道から駆けつけてくれた。

「以前、函館の役所の方とお話しすることがあって。函館もおもしろそうだなと思って、一泊二日で会いに行ってきました」

フットワークの軽い方。シビレの取材は3回目になるけれど、いつも何かに向かって目を輝かせている感じがする。

2016年に、IT人材の地方移住に伴う転職支援からスタートしたシビレ。

移住相談会やシティプロモーションイベントの企画運営、まちのファンコミュニティづくりやメディアの立ち上げなど。

さまざまなことに取り組んできたなかで、立ち上げ当初から変わらない想いがある。

「誰もが、どこにいても自分らしく生きられる社会であったらいいなと思っていて。豊かさを打ち出すために、何かを否定することで際立たせたくはないんです。生き方の選択肢をやさしく届けたい」

そのために今力を入れているのが、動画を通じた発信。

和歌山市では「Wakayama City Life」というメディアを立ち上げ、地域情報だけでなく、まちに関わる人たちの生き方や価値観を動画で伝えている。

「最近よく話しているのが、もとからあるものを伝えていくことがやっぱり大事だよねって。わたしたちがよく見せるよりも、まちにあるものを適切に届けていけたらいい。価値観の合う人に伝われば、そのまちに必要なことは自ずと起こっていくので」

九州では熊本市に続き、2つめの拠点となる大牟田市。福岡にもさまざまなまちがあるなかで、鈴木さんは当初から「大牟田市さんと一緒に取り組めたら」と考えていたそう。

「これまでは県単位での移住・定住支援やプロモーションのお仕事が多かったんですよ。移住相談会を開いても、県庁所在地とか、わかりやすいところに人が集まりやすい。そういうまちのプロモーションをうちがお手伝いする必要はないよねって」

住めば心地いいのだけど、これといった名物がなくて魅力が伝わりにくいまち。プロモーションの課題も、ポテンシャルもあるようなまちってどこだろう。

鈴木さんが調べたり、いろんな人に話を聞きに行ったりするなかで注目していたのが大牟田市だった。

「この方たちと一緒にやりたい、って思ったのも大きかったです。移住相談会とかに行っても、大牟田市さんって雰囲気がいいんですよ」

「何か動きそうな気配があったり、本当はこうしたいって思っている人がいたり。『いいねいいね、それやってみよう!』っていう雰囲気がベースにある。そこにわたしたちが入ることで、新たな流れをつくれればと思っています」

ローカルディレクターの主な仕事は、地域の人を取材して、動画や記事を通じて発信すること。

取材に行ったり、ネタ探しをしたり。まちでのフィールドワークに加えて、週2〜3回は役場に通い、担当の方とやりとりしながら企画を進めていく。

和歌山市では、ゲストハウスに併設されたオフィスを拠点としているものの、大牟田市の拠点はまだ決まっていない。市役所の広報課にデスクはあるので、まずはそこが仕事場になりそう。

出退勤の記録や、その日やること・やったことの連絡、オンライン打ち合わせなどでシビレ本社ともコミュニケーションをとりながら、リモートで働くこともできる。

「現地にいるからこそできる仕事に専念してほしいです。取材や撮影はその人にしかできないこと。一方で、動画の編集作業やデザインは本社で巻き取ることもできます」

シビレのメディアチームは、デザインもシステム開発も動画の撮影・編集も、全員が未経験からのスタートだったという。

これから入る人も、経験は問わない。

「ほかの地域にもいろんなメンバーがいるので、情報交換しながら。やりたいこと、必要だと感じることがあれば、会社全体を動かしてやってもらいたいですね」

撮影・編集した動画は、新たに立ち上げるシティプロモーションサイトのほか、シビレが運営している全国版の動画配信サイト「Japan Local Station」にも掲載される。

和歌山市や、大牟田市と同じく新たに拠点が生まれる静岡県磐田市など、各地のローカルディレクターが企画した動画もここにアップされていく。お互いによいところは吸収できるし、いい刺激にもなると思う。

地域おこし協力隊の制度を活用するため、任期は3年間。その後は独立するか、シビレの社員として働くか、本人の希望を尊重しながら決めていきたい。

鈴木さんは、どんな人がローカルディレクターに向いていると思いますか?

「ビジョンへの共感がやっぱり一番。スキルアップが目的なら、正直うちじゃなくてもできるところはいっぱいあると思っていて」

「スキルを身につけて終わりじゃなくて、大牟田市っていう地域の魅力を一緒に発信して、もっとみんなに知ってもらいたいとか。そういう想いを持って、何のために撮影や企画をしているのか見失わない人がいいと思います」

取材や発信を通じてまちのいろんな人とつながれるし、情報も集まってくるから、経験を重ねるほどできることの幅も広がっていくはず。

たとえば移住相談会で配るステッカーをつくったり、まちのファンコミュニティを育てたり。

自分の役割も“動画の撮影・編集や記事作成”と固めすぎずに、ビジョンに向けて何ができるか、柔軟に考えて動ける人が向いているんだろうな。

 

そんなローカルディレクターの伴走役となるのが、広報課の松尾さん。

大牟田市役所に勤めて18年目。今が一番楽しいという。

「大牟田市のシティプロモーションが今年で9年目。移住相談会に参加したり、いろいろやってきたんですが、売りものがわからないまま行商に出ているような状態で。シビレさんの存在は、まさに渡りに船でした」

ビジョンやターゲットを定めたものの、汎用的でぼんやりとしてしまう。広報課内でも「何か別の打ち手を考えなきゃ」と話していたところだった。

「ど田舎ではない。都会でもない。ちょうどいいトカイナカ…って、どこでも言っていることですよね(笑)。シビレさんとお話しするなかで、やっぱり人に焦点を当てていきたいなと。取材したくなるような、おもしろい人がけっこういるんですよ」

古い物件を次々に買ってリノベーションしている不動産屋さん。「うちはカフェじゃなくて本屋です」と言い張りつつ、裏観光案内所と呼ばれるくらいまちに詳しい店主。

この絵本美術館のプロデューサーも、学生のアイデアを活かしながら大牟田駅東口に待合所をつくるなど、おもしろいプロジェクトを進めている。

「ボランティアも盛んな地域で、ここでは絵本の読み聞かせも定期的に開催されています。目立つ人は限られているけれど、がんばっている人はいっぱいいる。そういう人たちに焦点を当てて紹介できたらいいなと思っています」

「東京と二拠点で生活している方もいます。なぜずっと大牟田に関わってくださるんですか?と聞いたら、『東京だと誰かがやっているけど、大牟田だと誰もやっていないことが多いから、なんでもやれる』って」

松尾さんの話を聞いていると、市外から関わっている人が多いことに気づいた。

もともとは炭鉱で栄えた大牟田市。その流れで化学系、金属工業系の大きな会社がいくつかあるほか、高齢化率も高いため、医療福祉系の施設も多い。

炭鉱労働者や転勤族の人たちがよく出入りしていたからか、移住者に対してオープンな雰囲気があるという。

地元の人や移住して大牟田で活動している人はもちろん、まちの外からさまざまな形で関わっている人たちを取材して発信していくのも、おもしろいかもしれませんね。「なぜか関わりたくなる」というのも、まちのひとつの個性と言える気がします。

そんな感想を伝えると、シビレの鈴木さんはこんな話をしてくれた。

「最近、活動人口っていう言葉を使っているんです」

活動人口?

「住民票のあるなしにかかわらず、その地域で何かしらの活動を起こせる人たちを活動人口と定義していて。その人たちを増やすことが、シビレに求められている役割なんじゃないかと思っています」

「地方の人口はますます減って、どこも移住者の取り合いみたいになってくる。でも活動している側からすると、『ぜひ移住・定住を!』って言われるとつらいじゃないですか。まちで活動している人たちの生き方を伝えて、『わたしも大牟田市で何かやりたい』と思う人が増えたら、結果的にまちも元気になっていくと思うんですよね」

わかりやすい名産品や観光名所はないけれど、のびのびと自分の仕事をしている人たちがいる。

取材後に市役所の広報課を訪ねると、「じわじわと味わい深い、スルメみたいなまちなんです」と語ってくれる方もいました。

このまちから、生き方の選択肢をやさしく届けていってください。

(2024/6/26 取材 中川晃輔)

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