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人に寄り添い 地域を支える 自分自身も育つ仕事

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「相談者さんが持つ技術や特徴のなかには、必ず光る魅力がある。それらを見出して、強みとして伸ばしていく」

「一緒に新しいチャレンジに挑戦して、事業がうまくいく場面に立ち会えるのは、この仕事の醍醐味だと思います」

そう話してくれたのは、Saya-Biz(サヤビズ)のセンター長、小林さん。

埼玉県西部の狭山市にある「狭山市ビジネスサポートセンターSaya-Biz」。2019年に開設された、地域の経営相談所です。

「新しい商品アイデアを練りたい」「お客さんにもっと来てほしい」「商品PRなど情報発信に困っている」などなど。

中小企業や個人事業主の抱える悩みに対して、専任のアドバイザーが耳を傾けて強みを見つけ出し、解決に向けた具体的な提案をします。

相談は無料で、1回1時間。企画書や決算書もいりません。

大切にしているのは、お金をかけずに知恵を絞り、結果が出るまで徹底的に相談者に伴走すること。この手法は「Bizモデル」と呼ばれ、全国20以上の市町村に広がっています。

今回はサヤビズで、ビジネスアドバイザーを募集します。

相談者の話に寄り添い、マーケティングやデザイン、販路開拓やプロモーションといったさまざまな角度から、成果につながる提案をする。さまざまな事例に向き合うなかで、自身の経験値も上がっていく環境だと思います。

小林さんの姿を間近で見ながら、ゆくゆくは自分も副センター長やセンター長を目指すことも可能です。

ハードルは高く見えるけれど、未経験でも大丈夫。学ぶ時間はたっぷりとあります。

 

サヤビズの最寄りとなる狭山市駅は、新宿や高田馬場から特急が出ていて、都心から電車で45分ほどとアクセスがよい。

改札を出ると、駅前のロータリーを見渡す高架の歩道に出る。

歩道を抜けて、サヤビズの入っているビルに到着。

受付で迎えてくれたのが、市役所の産業振興課長を務める武井さん。産業振興課は、2019年に狭山市ビジネスサポートセンターを立ち上げた部署。

「狭山市は、日本三大銘茶に数えられる狭山茶をはじめとする、地域産業が盛んです。さらに市内には2つの工業団地があって、多種多様な産業が集まる、県内有数の工業都市なんですよね」

狭山市には、およそ4500の事業所がある。さまざまな事業者の声に応え、狭山市全体を活性化させていくために、2019年に自治体主導で誘致されたのがサヤビズだ。

「事業者さんからの相談は無料。そして、結果が出るまで伴走する。これがBizモデルの大きな魅力であり、事業者さんに受け入れられている理由だと思っています」

これまでのサヤビズへの累計相談件数は8000件を超えた。サービスや飲食、小売、製造業など、相談に訪れた企業や個人事業主の数は、900にのぼる。

「ありがたいことに、月に100件前後のペースで相談をいただいていて。6年目を迎え、事業所さんから頼れる存在になりつつあると思っています」

サヤビズは行政にとっても、重要な施策のひとつ。毎年、市の総合計画でも重点事業として上がっている事業なんだそう。

「今後も、市として地域の事業者支援をするために、サヤビズを永続的につづけていきたい。そのために今回の募集に至りました」

 

「ぜひ日々の仕事について聞いていただけたら」と紹介してくれたのが、センター長の小林さん。

前回の募集から、ちょうど1年ぶりになる。

「業務コーディネーター募集も、無事にいい人に来ていただけて。バリバリ働いてくださっていますよ」

もともとは、大企業向けのコンサルタント業と、スタートアップ向けの創業支援の仕事を並行しておこなっていた小林さん。

仕事を続けるうちに、経営課題に対して大手企業ほどコストや力をかけることができない中小企業の課題を感じるように。そこで、企業の強みを見いだし、お金をかけず知恵をつかってビジネスの流れを変えることのできるBizモデルに興味を持つようになった。

サヤビズのオープンと同時に、センター長として赴任した。

相談の大まかな流れは、まずは1時間のヒアリングから。話のなかで強みを引き出し、その強みを生かした売上アップのための方策を提案する。

デザインやオンラインの活用など、専門的なアドバイスが必要な案件については、各アドバイザーへと引き継ぎ、一歩踏み込んだサポートを行っていく。

たとえば、と紹介してくれたのが、狭山市にある農園がつくるいちごを、ブランド化する支援。

「相談者さんの農園でつくるいちごについてヒアリングすると、朝収穫したいちごを当日中に出荷するというこだわりがあったんです」

朝早い苺はみずみずしく、朝つゆが落ちて朝日が当たったときのきらめきが美しい。その姿から、「あさつやいちご」という名前をつけてブランディングすることに。

「いちごの平均糖度は10度前後、一粒の重さが15gと言われていますが、あさつやいちごは平均糖度が13度以上で、一粒30g以上のものに厳選したんです。ギフトや贈答用向けの特別ないちごとして、売り出していくことにしました」

販売すると、予測していた売り上げを大幅に超える結果に。新聞にも掲載され、知名度も上がった。

さらに今年は、初年度の結果を受けて、いちごを無駄なくより多くの消費者に届けるための販路を見直すことに。いちご狩りの早期スタートや、加工への卸販売など新たな取り組みをはじめた。

地元の洋菓子屋で販売するケーキのいちごとして使用したり、地域の百貨店と組んで直接販売やお正月の福袋の景品としての販売を行ったり。これまで以上に、販路を広げていくことができている。

「実はその洋菓子店さんは、サヤビズで創業支援をしたお店で。サヤビズが支援した事業所さん同士でつながりができたことも、よかったですね」

「サヤビズが目指すのは事業の成功だけではありません。私たちの支援が終わっても、相談者さんが前向きに自走できる段階までサポートします」

新しく入る人は、相談者さんとの最初の接点となるヒアリングから担当することになる。仕事の流れを覚えるまでは、小林さんや専門アドバイザーの相談に同席したり、リサーチを手伝ってインプットしたりしながら、Bizモデルについて学んでいく。

「着任から3ヶ月後を目処に、徐々にヒアリングを担当していただいて。半年後には、相談者さんの強みを活かした具体的な提案ができるようになれれば理想ですね」

サヤビズでは、近隣の信用金庫から一年にひとりずつ出向を受け入れている。彼らはBizモデルについて学びながら、金融アドバイザーとして、融資や補助金に関する相談、創業セミナーでの講師などを担当。支店に戻ったあとは、経営支援の部署で働いている。

「Bizモデルをまったくご存じないところから、人を育てるノウハウはあります。安心して来ていただきたいですね」

とはいえ、事業所さんからの期待や、責任を伴う大変な仕事のように思います。

「人の人生を背負っていますからね。一つの判断を間違えると、会社を潰しかねない。毎回、すべて真剣にというのは大前提。ただ、スキルや経験よりも、ご相談の内容や、企業さまの情報を、一語一句漏らさないぞと、興味を持って聴ける姿勢がとても大切なんです」

「相談者さんが持つ強みを活かしていく段階で、商品やサービスを受けるお客さまのニーズや、市場の流れといった別の視点が必要になりますが、そういったビジネススキル的な力は、入ってからでも十分身につけることができます」

相談者さんの話から戦略を立てる力を養うために、小林さんは日々どんなことを心がけているのでしょう?

「SNSだけだと、すでに見たものに関連することばかり目に入ってしまう。知らない世界を知るために、レコメンドが入らない新聞や本を積極的に読んでいます」

「ほかには、自分の興味がないことをあえてやる、ですかね」

興味がないこと、ですか。

「最近だと、落語や能といった古典芸能が気になっていて。ほかにも、先日は着物のコーディネート会に行きましたよ」

「たとえば大河ドラマを見ても、『ビジネスモデルにおける、勝ち筋の型みたいなものって、昔も今も変わらないな』みたいな気づきがあるんです。そういった経験が、相談者さんとのやりとりのなかで、どこでつながるかわからない。知らないことを学ぶ姿勢も、この仕事では大切です」

小林さんはほかにも、ケーブルテレビでの地域の事業者情報の発信や、セミナーの企画といった、センターの活性化にも取り組んでいる。さらに休みの日には、相談者さんが地域で行うイベントへ自主的に行くこともあるそう。

「相談を通じて、目の前の相手が前向きになれる姿を見ることが、なによりうれしい。最も大変なところであり、大きなやりがいです」

相談者に向き合い、何ができるかを考える。高い当事者意識が必要だと思う。

「求められるレベルに対して、今すぐに100パーセント力を発揮できなくていいんです。むしろ、学べる機会だって、前向きに捉えていただければいいですね。人の話を聴いて、自分なりに考えて、動いてみて。相手のための行動をいとわない人のほうが、自身の成長を実感できると思います」

「どんな相談でも、専門的なスキルを持ったアドバイザーが支えてくれる。サヤビズのスタッフ一丸となって、日々相談に向き合っています」

 

そこで最後に紹介してくれたのが、デザインアドバイザーの青松さん。

前々回の記事を読んで、2020年からサヤビズへと入職。ウェブサイトやパンフレット、商品のロゴやパッケージなどのデザインに関する相談を受けている。

センター長の小林さんが話していた、いちご農家さんのパッケージデザインの作成サポートを担当した方。

「僕は相談者さんと話しながら、その場でデザインのラフを描いて見せることが多いんです。相手の反応を見ながら、納得するものにじりじりと近づけていく作業はとてもやりがいがありますね」

飲食店のメニュー表の価格の変更といった細かなデザインの変更で、毎月相談に来る人がいたり、店舗の内装についての相談に乗ることもあったり。

「話を重ねるうちに、だんだん自分でこうしてみようかなとか、やり方を覚えてきてくれる。成長に伴走しているのが、間近で見ていてとてもうれしい瞬間ですね」

「毎回、まったく違う業種の方が相談に来るので、シンプルに面白いです。5年働いていても、本当に飽きないというか。やればやるほど仕事が面白くなる、そんな感覚です」

青松さんは、どんな人と働きたいですか。

「ヒアリングする上で大切なのは、相談者さんに対して意見を押し付けないこと。サヤビズでは、ある程度こうすべきだというのは伝えるけれど、相手に最後まで寄り添った提案を大切にしています」

「結果がどうであれ、反省を次に活かして、サポートをする。『相手のために諦めない』という気持ちをきちんと持っている人であれば、活躍できる場所だと思います」

 

サヤビズで経験を積むことは、きっと自分の成長につながるだろうし、いつか次のステップを考える際にもきっと役立つと思う。

必死で頑張る人のために、力を使いたい。

そう真剣に考えられる人にとって、大きな一歩になる場所だと思います。

(2025/01/27 取材 田辺宏太)

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