まるで、 “木” みたいな会社だな。
取材中、ぽつりと浮かんだ言葉を投げかける。
「たしかに、そうかもしれない」と、会社のみなさんが続ける。
一本の木が、長い年月をかけて年輪を刻むように。丁寧に日々を重ね、じっくりと育ってきたのが、浅草にある佐久間木材株式会社です。
創業から120年。建材の卸売りや、オンラインでの木材の販売など。木を使ったものづくりをする人に向けて、さまざまな事業に取り組んできました。
今回募集するのは、木材の受注、配送に加え、オンラインストアの運営などに携わるスタッフ。ほかスタッフと同じく、さまざまな仕事を横断的に担います。
経験は、求めません。
一日一日の仕事を、丁寧に積み重ねる。自分のペースで仕事と暮らしを調和させたい人に、ぜひ知ってほしいです。
蔵前駅から歩いて10分ほど。
ものづくりの工房や問屋が並ぶ、下町らしいエリアの一角に、佐久間木材はある。オレンジ色で、目立つ外壁だ。
これから配達に向かうのか、フォークリフトで木材を積んでいる。
迎えてくれたのは、4代目代表の佐久間さん。会社や木材のことについて、YouTubeでも発信している方。
取材の前に見てきたことを伝えると、「ありがとうございます」と照れくさそうに応えてくれた。
120年前、木材を卸す材木屋として創業した佐久間木材。
時代とともに、抜型(ぬきがた)事業という独自の分野を開拓することに。
抜型とは、合板(ごうはん)に溝を掘り、金属製の刃を埋め込むことで、紙などをプレスし切り抜くことができる型のこと。よく見るお菓子のパッケージや、電化製品を包むダンボールなどには、この抜型が使われている。
佐久間木材では、その土台となる合板を卸している。
「住宅や家具とは違う、ちょっとニッチな分野です」
佐久間さんが代表を継いだのは、およそ25年前のこと。
工務店などに木材を卸すだけでなく、木の魅力を一般の人にもひろく伝えたい。その想いで、会社のWEBサイトや一般のお客さん向けにオンラインストアをつくるなど、さまざまな取り組みを行なってきた。
「僕らは、木を使ってものづくりをする人たちの “お手伝い企業” でありたいという気持ちがあります。職人さんも、一般の人も、ものづくりをしているお客さんのことを、僕はすごく尊敬している。そんな人たちのお役に立てるように、新しい挑戦もしていきたくて」
前回の取材からおよそ1年。新しくはじめたのが、合板を精密に切断する「カット加工」と呼ばれる事業。
「外注先が高齢化してきてね。だったら自分たちでやっちゃおうって。1年前まで誰もできなかったんですけど、今は全員が機械を扱えるようになりました」
さらに今年からは、より細かな加工作業を社内で行えるよう、新しい作業スペースの新設が進んでいる。完成すれば、個人向けのオーダーメイド製品も対応できるようになるとのこと。
「無理なく、できること一つずつ増やしていきながら、成長していきたいんです」
外部への依存を減らし、社内でできることを増やすことで、社員も成長の手応えを得られる。とても健全なように思える。
「年輪経営って言葉があるじゃないですか。僕らはまさにそれで。まるで、木みたいに。成長が早すぎるとスカスカで弱くなっちゃう。年輪を重ねるように強くなりたいんです」
「利益が出る体制をつくるのは経営者の役目。もちろんその裏には、日々の試行錯誤が欠かせません」
オンラインストアや、カット加工など新しい事業にも挑戦したことで、安定して利益を出せるように。スタッフにも利益を還元できるよう、ボーナスや年間休日の増加など、長く働きやすい環境を整えている段階だという。
「社員が、楽しいと思える会社づくりを目指したい。売り上げを伸ばして、給料を上げてきたけど、誰ひとり無理することなく。働いてくれる人が『この会社でよかった』と思えるようにしたいんです」
どんな人と働きたいですか、と聞くと、社内向けに毎年配っているという経営計画書を持ってきてくれた。会社の歴史や、木材を取り巻く社会状況なども交えて、とても詳しく書かれている。
紹介してくれたのは、「木のため世のため人のため」という言葉。
「とにかく、木が大事。地球上で生きている人間は、酸素を出してくれる木がないと生きていけない。木へのリスペクトがすごくあるんです。木という素材に惚れ込んでいる。それを共有できる人に来てくれると、本当にうれしいですね」
続いて話を聞いたのが、現場のリーダーを務める栗原さん。
2007年に佐久間木材に入社するまで、14年間レンタルビデオ店で働いていたという。
「店長だったんですけど、仕事時間が早朝だったり深夜だったり、不規則な生活になってしまっていて」
「サービス業だったので、特別な技能が身につくわけでなく、持っているのは運転免許ぐらい。ぼんやりと不安を抱えていたんです」
結婚を機に転職を決意。布団メーカーや不動産屋など、いろいろな業界を受けるなかで、佐久間木材と出会った。
「社長と面談したんです。これまでの会社のこととか、隠すことなく素直に話してくれて。信頼できるなって。とても好感触だったんですよ」
全くの経験がないなか、木材の世界に飛び込むことに。
佐久間木材での仕事は、毎朝その日の納品予定などを確認するミーティングからはじまる。
その後は、抜型の営業や配達、倉庫管理、オンラインストアの事務作業など。あらゆる業務が当番制で、週ごとに割り振られている。
新しく入る人は、先輩についてそれぞれの仕事を1週間ずつ経験し、やり方を覚えていくことになる。その後、自分のペースで独り立ちを目指していく。
「建材の重い板をどう運ぶかとか、配達先のお客さんとどんなやりとりをしているか、とか」
「人によって少しずつ方法が違うから、いろんな営業スタイルや配達のコツを知ることができる。短期間で社員たちと密にコミュニケーションができるから、馴染みやすいとも思います」
配送や営業、倉庫作業もあれば、2トン車も、フォークリフトも運転する。幅広く仕事をこなしていくから、学ぶだけでなく、自分から動いていく姿勢が求められると思う。
栗原さんは未経験だったけれど、すぐ近くにいる社長や先輩に気軽に質問できる仕事環境だったことが大きかったという。
「慣れるまでには、1年もかからなかったですね。私でもできているから、大丈夫です」
「ただ、一人ひとりにノルマが課されているわけではないから、自分でその日のゴールを設定する必要がある。定時の5時までに終わらせられるためには、どうすればいいか。自分で自分をしっかりさせる、っていうのが大事ですね」
責任感を持って、メリハリをつける。自律する姿勢が大事だ。
「朝8時までに出社して、5時には帰宅できる。しっかりと仕事をすればという前提ですが、生活リズムが安定するんです。平日でも友達と会えたり、髪切ったりして、土日は家族との時間も取れる。プライベートが充実すると、仕事もうまくいく気がしますね」
「うちの会社、社長もほかの社員も、なにかあれば必ずリアクションしてくれるんです。挨拶ももちろんですけど、配達行くときには『行ってらっしゃい』とか、代わりにファックスを送ったら『ありがとう』とか。感謝の気持ちをもらえるし、渡すこともできる。それがうちの会社のすごくいいところだと思うんです」
社内で優しさが飛び交うのは、仕事を横断的に関わることで、ほかの人の動きを見る視野が広がるからだと思う。
「元気にやってくれる人なら、経験は関係ない。お客さんとの会話、楽しいですよ」と、栗原さんは笑う。
「配達先のお客さんは、みなさん優しいですね。職人さんだから、わからないことも聞いたらうれしそうに答えてくれる。慣れちゃってもよくないけど、緊張することはないというか」
「僕らが扱う合板って、マニアックなジャンルなんです。インターネットとかでも調べても全然出てこないような情報も、職人さんに聞いたり、自分の目で見たりするほうが確実で。いろんな新しいことを知れるのは楽しいですね」
最後に話を聞いたのが、入社3年目の吉田さん。佐久間木材では最年少の、30代の方。
「基本的に、お客さんはみなさん木が大好き。僕の担当で、釣りで使うタモ網を自分でつくったっていう方がいて。これまで僕は木に携わる仕事が長かったので、ものづくりの話が弾むし、楽しい。今までの経歴が無駄じゃないなと思いますね」
大学を卒業後、木に関わる仕事を重ねてきた吉田さん。
「木って、そのときどきの環境で成長が違ったり、節があったり。生きているのを感じられるから、大好きなんです。鉄やガラスといったほかの素材とはまた違いますね」
前職で家具をつくる中で、素材そのものに惹かれるようになり、合板を扱う仕事に興味を持った。
そんなとき、日本仕事百貨の記事を読んで、佐久間木材と出会う。
「こんな会社があるなんて知らなかった。最初は抜型って何? って思ったくらいで。同じ木の素材でも、自分が知らない使い方をはじめて知って、面白そうだなって」
入社後は事務作業から始まり、営業や配達に同行しながら、全体の流れをつかんでいった。慣れるまでは、半年ほどだったという。
基本的に配達では、重い木材を一人で運ぶ。場合によっては1枚20キロ近い重さになることも。
「バランスが大事だけど、コツを覚えればなんとかなりますよ。無理なく技術を身につけられるよう、全員でサポートします」
最近は、木工の経験を活かし、新しくできる加工室のレイアウトや工具の選定について、佐久間さんと一緒に考えているそう。
「いい意味で、社長やスタッフとも距離が近いのですぐ話せるし、わからないことは聞くことができる。身近なサポートがあるから、働いていて安心感があって」
「年齢が20歳くらい離れている先輩とも、気軽に話せる。入社1週間でフォークリフトに乗ったときも、『いけるいける!』って見守ってくれて。失敗しても『俺も昔やったよ』と笑ってくれる」
入社当初、木材を運ぶ途中にぶつけてしまったときも「ここはこうやらないとね」と、次の機会に活かせるよう論理的に教えてくれた。
「世代は離れているけれど、肩肘張らない、良い雰囲気だと思います。昨日のテレビ観てどうだった? なんて雑談もするし。緊張しないんです」
「木が好きなら、きっと馴染めますよ」
裏表なく、日々のことを素直な気持ちと言葉で教えてくれるみなさんの姿が印象的でした。
木と向き合いながら、じっくりと、たしかな成長を重ねたい。
木とともに育つ。佐久間木材のみなさんと、新しい一歩をともに歩んでいく人を待っています。
(2025/03/07 取材 田辺宏太)
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